生活の達人。
最近、実家が恋しい。実家は居心地がいい。
“捨て魔”の母は、よっぽどの思い出じゃない限り容赦なく捨ててしまう。
我々の子どもの頃の写真やアルバムは置いているけど、へその緒は捨てたんじゃないか。
私の幼稚園〜小学校、中学校、高校の文集や図工の作品もある日全部捨てられていた。
賞を取ったり学校や役所で飾られたりしていた物もあって、私的には思い出深いものだった。
私「えー!なんで捨てたん!?」
母「え?いらんやん。開けて見るんか?この先。
ホコリかぶってんのに。」
私「でも、思い出やんか!」
母「思い出ばっか残してても場所とるだけ!
今が大事なの!」
何も言い返せなかったし、確かにそうだ…。
今、断捨離とかミニマリストとか流行っているけど、母は昔からそうだという。
それは、母の生い立ちにあるのかもしれない。
母は佐賀県の離島出身。
島には中学までしかないから、就職や進学で島を出る人が多い。もちろん島なので、漁師とか家業がある人は残るんだけどね。
母は下関の美容学校(高専)に進学し、そのまま下関の美容室に就職。島を出てから結婚するまで、ずっと下宿生活。下宿先は相部屋で自分のスペースは限られ、少ない荷物しか持てない。
結婚して、持ち家になって、ようやく家具やインテリアを自由にすることが出来たと喜んでいた。
そして今、娘が続々と家から出ていき、自分ひとりが暮らす快適な住まい作りを始めた。前にも増してガンガン物を捨てる。私が置き去りにしてる部屋の荷物も「全部捨てるぞ」と日々脅されていて、恐怖を感じているところ。
私が今、生活をおざなりにしてしまっているから、母の毎日の暮らしが羨ましいし尊敬する。
ホームベーカリーでパンを焼き、ゆで卵を作り、コーヒーを淹れ、自家製モーニングを楽しんでいる。泊まるとモーニングを作ってくれるし、友だちを招くこともあるらしい。
優雅じゃんかよ。
炊飯器やオーブンレンジ、掃除機、テレビ、ブルーレイレコーダー…家電好きや便利グッズ好きの母は、自分の暮らしを楽にしてくれる物を買うのが上手いし、ちゃんと使いこなす。
家具や食器もニトリや100均で買い足し、ひとりの老後を気軽に過ごせる準備をしているそうだ。
「私が死んだら、あんたたち遺品の処分とかできんやろ。今動けるうちにやっとかんと!」
と言っていた。
凄い。母よ、あなたは本当に凄い。
老後、死んだ後のことを見越して、今を生きてる。
私は今が必死過ぎて、到底考えもつかないんだけど、生活をコントロールしながら生きてるのか。
最近、SNSや雑誌、書籍の影響で「丁寧な暮らし」とか「ナチュラルな暮らし」とか流行ってるし、私も影響を受けまくっていたけれど、どうでもよくなってきた。
家電や便利グッズに頼らず、時間と手間をかけないと、丁寧な暮らしじゃないなんてことはない。その分時間を有効に使い、作業が楽になってのんびりできるんだからいいなぁと思う。
実家に帰りたいのは、
母の生活をのぞき見したいからなのかもしれない。