

32歳独身、女性。フリーランスの編集者・ライター。簡単な私の肩書です。
この肩書きを持つ自分自身に、なんだか急に疲れてしまいました。窮屈だと、感じています。
大好きだった、憧れていた雑誌を作る人になれたのに、全然満たされていないのです。
ある日、「離島に渡ってそこで生活してみよう」と思いつきました。
コーヒーを釣り人に売りつけて生活できたらいい。贅沢せず、暮らしていけるんじゃないか。
そんな淡い願望を抱き始めた頃、阿倍野にあるドーナツ屋「あたりきしゃりき堂」のご主人・久保さんから、
ドーナツ作りを学ぶチャンスをいただいたのです。
ドーナツ作りは思いのほか難しく、力仕事で、火傷などのキズも多く、過酷です。
しかし、自分が作ったドーナツを、笑顔で買って帰ってゆくお客さんとのおしゃべりが楽しくて、
その時間だけ、“ドーナツ&コーヒー売り”が私の肩書に追加されます。
少しだけ自由度が高まったような気がします。この後の自分がどうなるか、ワクワクしてきました。
来年の私は、さらにもうひとつ肩書が増えてるのかもしれないし、減っているかもしれない。
揚げたて熱々のドーナツの穴をのぞいたら、自分の次のステージが見えたらいいのに…なんて思うのです。