「俺、ゆみえちゃんのこと放っておかれへん」男2

ランチデートから2週間後、私とMはふたたび会う事になった。そう、彼の人生を変えてくれたという奇跡のバーに行くために…。

「人生変わる程のバーって一体どんなステキなところなんやろ…路地裏の、猫とかがおるような…知る人ぞ知る的なとこなんやろか…」時刻は夜の8時。期待にハト胸を膨らませながら某駅前でMを待つ。「おまたせ〜!」軽い調子で、前回と同じウィンドブレーカー着用のMが到着。大通りから外れ、スタスタと住宅街を歩く。「おお…通っぽい」ドキドキしながらMの後ろを歩く。「この先にどんなオシャレなバーがあるんだろ…」私の期待が最高潮に達した頃、Mが立ち止まった。「ココ!」指差したさきには場末のスナックを射抜いたようなボロい店舗があった。看板には丸文字で「Sunny Days」みたいなダサめの店名が書いてあった。「ダセェ!!」心の中で叫んだ。テンションが地面にめり込むくらいに下がったまま煙草と芳香剤の臭いが充満する店内に入る。すでにカウンターは満席で盛り上がっている。目をやると、交互に座った男女がねるとんをしていた。「何ココ…今すぐ帰りたい…」そう思いながら奥に進むMについていく。VIPルームと書かれたガラス貼りの部屋に通される。中にはきれいな女性が一人座っていた。

M「俺の友達。Rちゃん」、R「Rです!ヨロシク〜♡」

………意味が全くわからなかった。今から私はこの部屋でこの美人に壷でも買わされるのか…。買うまで帰れないのか…。そんな不安をよそにRが話を始める。「こないだの飲み会たのしかったな〜〜〜!!Mくんてば飲み過ぎやで!!ゲームもりあがったもんな〜!あ、ゆみえちゃんてお酒好きなん?」「ゆみえちゃんはどこに住んでるん?え!あの近くに良いエステあるの知ってる?」「ここのマスターのカルボナーラは最高やねん〜♡」突然始まった世間話のような会話に戸惑いながらも返答する。ようやくマシンガン世間話のタマが切れ落ち着いたので、「あの…今日は…その…このお店はどういう…」とモゴモゴしながらMに趣旨説明を求めた。Mはにっこり笑いながら言った。

「ここはな、友達をつくるバーやねん。俺もここでたくさん友達できてん。ゆみえちゃん、あんま友達おらんやろ?せやからここ来たらゆみえちゃんにも俺みたいに友達できるかなって思って☆」

 

よ……余計なお世話じゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!!!!!!!

 

たしかに私は友達が少ない。だからといって会ったばかりのお前にあてがわれた友達なんかいらんわい!!!!!ボケェ!!!!!

 

毛が逆立つ程怒りを憶えたが、ニコニコしながらこちらを見るMとRを見ると何も反論できなかった。「あ…ああ〜〜そっか…ありがとネ。ハハハ」気の小さい私には、そう返してニヤつくのが精一杯であった。「ゆみえちゃんもここで友達いっぱいつくって、一緒に山登りいったり、ゲームしたりしよ☆」清い笑顔でそう誘うRに気持ち悪さを感じた。その笑顔は宗教勧誘の人のそれにとても似ていた。返答に困っていると、カウンターの男女がねるとんを終えてこちらにワラワラと入ってきた。「あ、Mくん久しぶり〜、今日はねるとん全然カップルできなかったよ」「今日もこの後Tさん家コース??」こちらにきた多くは顔見知りのようだった。ほどなくしてマスターらしき男性も入ってきた。Mが私にマスターを紹介する。「マスターのTさん。俺の人生を変えた人!Tさん。彼女は友達のゆみえちゃん。仲間にいれてあげて」

ぽっちゃりしたEXILEメンバーのような出で立ちのTが「ゆみえちゃん!ヨロシクゥ!今日から俺たち友達な!!!」と笑顔でハイタッチをしてきた瞬間、体中に鳥肌がたった。

【ポジティヴ】【リア充】【大学サークル】【自己啓発】【宗教勧誘】【EXILE】…

私の嫌いなもの全てがこの日の夜には詰まっていた。笑顔で鳥肌が立ったのは初めてである。

「中高登校拒否を繰り返しましたが、大学入ってからこの場所に出会い人生変わったんです私」感がモロにわかるようなあか抜けないブスがMに話しかける。「Mくぅん、今日もこのあとTさん家行くでしょ〜?今日も人狼ゲームしよぉ〜!私勝つまでやったら朝までやめへんで〜」Mも嬉しそうに「当たり前や〜!俺かて、絶対負けへんで〜!!朝までコースや!」と答える。くるりとこちらを振り返り、「ゆみえちゃんも行くよな?Tさん自慢のカルボナーラ食べて人狼ゲームしよ^^」Mがそう言い終わる前に「ごめん帰るわ」と席を立ち、店をでた。

消えない鳥肌をこすりながら帰りを急いでいるとMからラインが来た。

「大丈夫??急に友達増えたからちょっと戸惑ったかな^^;  次は人狼ゲーム一緒にしような!」

無表情でMのアカウントをブロックし、電車に乗り込んだ。

 

こうしてネットでの婚活1人目は失敗に終わった。

Mは一体何のためにあのサイトに登録したんだろう。あのバーに連れて行くためだろうか。彼はとにかく「友達」がいっぱい欲しいのだろうか。てゆうか人狼ゲームって何。全く意味はわからないままだったが、とりあえず「無理してまで友達はいらん」、そう心に深く刻み込んだ。

バタフライ・ゆみえのキラキラ婚活記

プロフィール

バタフライ・ゆみえ

婚活の旅に出た31歳。

職業グラフィックデザイナー。

 

このコラムが、そろそろ婚活を始めたいけどどうしたいかわからない方の、一歩踏みだす勇気となりますように。同じように婚活に悩む方を少しでも元気づけられますように。高みの見物で読んだリア充が、どうか爆発しますように。

コラムは婚活の旅の終着点「結婚」にたどり着くまで続けようと思ってます。はやく終わりたいです。